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INTERVIEW

島の港町の更なる魅力アップへ事業づくり。 地域と一緒に活動してくれる人材を求めて。

井上 明さん

宮崎県 → 広島県
2008年
1978年生まれ 船宿カフェ「若長」経営 合同会社よ~そろ 代表執行役員 家族3人(妻・娘)

大崎下島(呉市豊町)の御手洗地区。すぐ目の前は愛媛県・岡村島という瀬戸内海の島である。菅原道真が大宰府に左遷される途中で寄港し手を洗ったことが地名の由来という。古くから交易の拠点であり、江戸時代は北前船が寄港し10藩以上の藩が参勤交代時の潮待ち・風待ちとして停泊した。

物流が陸上交通に移行するまでの繁栄を偲ばせる、江戸から昭和にかけての建築物が連担して残り、全国に109地区、広島県には2地区しかない重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。この、みかんやレモンなどの名産地としても知られている港町で、地域資源を活用し、地域課題を逆手に取って、新しいビジネスモデルづくりに取り組んでいる井上明さん。
大学卒業後7年半九州で会社員生活を送った後、呉市中心部でシニア向けパソコン教室を経営しながら、週末を中心に御手洗に通っている。
空き家となった江戸時代の船宿を活用したカフェやギャラリー、鍋焼きうどん屋の経営、耕作放棄が進むみかん畑の景観維持活動、御手洗自治会による土産物のみかんろうそくの開発、島の子供達向けプログラミング教室など、地域のリーダーと連携しながら、“暮らして良かった”“暮らしたい”町にするための仕組み作りに挑戦している。

御手洗で活動を始めた経緯は?

会社勤めを辞め、妻の実家のある呉市に戻ってきた頃、たまたま目にした呉市の広報紙に、観光ボランティア養成講座の記事がありました。
呉をもっと知りたいと思い、受講し御手洗に出会いました。御手洗には島と海が織りなす素晴らしい風景や、歴史があり、広島市北部の郊外団地で育った私にはとても刺激的でした。
そして、その豊かな地域資源を自分なりに世界に向けて表現させてもらえる土壌もあり、御手洗で色々な仕事づくりをしようと決意しました。

知らない土地に対しての不安はありましたか

元々飛び込み営業もしていましたので、そこまで不安はありませんでした(笑)
また御手洗は、昔から全国に開けた交流拠点であり、ある意味「都会」でもあって、地域の人たちには、私のような外来者を受け入れてくれる気質があるように思います。いまも勉強中ではありますが、地域の人に色々なことを教えてもらいながら、新しい事業や活動の企画を考えています。
ただ、1人で町をウロウロしているだけではやはりダメで、色々な人と沢山話をして、町の仕組みや、その土地の歴史やニーズを積極的に知ろうと思うことが大事ですね。私自身も、地元の人とのコミュニケーションを大事にしてきました。時には自分の意図とは違う形で話が伝わることもありますが、その時はちゃんと向き合って話をし、理解してもらうことを大事にしています。

会社を設立した理由は?

活動4年目に「合同会社よーそろ」を立ち上げ活動をしています。現在社員は3名です。
様々な分野でいろいろとやってみたいことがあり、それらを実現するためには、収益を上げて仲間を集め継続できる会社組織が適していると考えました。
個人的な活動はもちろん継続して続けて行くのですが、会社としてでなければ挑戦できないことをやっていこうと思っています。
1つ1つは大きなビジネスではありませんが、小さいながらも町の資源を活かし、残すべきものを新たな魅せ方で繋いでいく事業を進めて行きたいと思っています。

どういう人に移住してきて欲しいですか?

この小さな町で、単純に人が来ればいいというものでもありません。求めているのは、仕事をゼロからクリエイティブに生み出せる人、そしてそれを楽しめる人ですね。
例えば、空家を建物や町の風情を活かした“ここにしかない”お店として活用しながら、独自の情報発信をしてくれる人。特に女性の感性で、地域の様々な魅力を発信してもらえたらと思います。まちづくりの会議には男が多いので(笑)
あと、地域の歴史や文化を尊重して、周りの人にちゃんと感謝できる人、というのも大事なポイントですね。
ゼロから生み出すということは、実現可能性も未知数だし、なんの保証もありませんが、国も認める伝統的な町並みや文化が残る御手洗は世界にもその魅力を伝えることができる大きな可能性を秘めているように思います。

御手洗ではどんな働き方ができますか?

仕事を生み出すという観点で言うと、フリーランス経験のある人や、どこにいても仕事ができるというスキルを持っている人には特に向いてるでしょうし、橋を渡れば50分で呉市中心部、1時間半で広島市中心部に出ることも可能なので、都市部で働きながら、というスタイルも可能です。地域に根ざしたビジネスや、市街地で働きながら定期的にアクティブな活動をするなど、フリースタイルで自分の生活を表現できる方に、是非来ていただきたいですね。もちろん、私がいま進めているいくつかの事業に一緒に取り組んでもらえると嬉しいです。
移住の際に、「仕事」というのは大きなハードルにもなりますが、”仕事を与える”ではなく、”仕事をつくる”ということが僕の御手洗での大切なミッションのひとつだと考えています。
また、もともと商売の町でもあるので、色々なアイデアを受け入れてくれやすい気質が地域にあり、すごく協力的な場所だと思っています。

広島にUターン後の生活は楽しいですか?

広島県出身者ではありますが、私個人としては縁もゆかりもない呉市に移住したのですから実質的にはIターンです。(笑)でも毎日が楽しいですね。
土日とかも休みなく動いて、平日と休日の区別もない感じなのですが、とても充実しています。金銭的には裕福ではありませんが(笑)
そして、何かを作り上げる面白さは何事にも代えがたいですね。地域の人や、お客さんが喜んでくれる姿を見るのがすごく嬉しいです。

こんな生活ができるのも、広島の地域環境があればこそだと思っています。
住まいは呉市の中心部で、橋でつながる4つの島を渡って御手洗に通っていますが、1時間で来ることができます。渡海橋や海岸沿いの道路から観える景色があまりにも素晴らしいので、しょっちゅう立ち止まってますけど。(笑)
広島市にも、船宿カフェで展示・販売している急須等の陶芸作家の方に会いに、また、新しい商品開発や感性をもらう為にアーケードを歩いたり百貨店にも行きますが、呉市内から高速道路で30分くらいです。中四国一の都市と島嶼部、山間部が割と近い距離にあるのも広島の魅力ですね。

最後に、地方移住を考えている人にメッセージはありますか?

人生の中で、思い切って動ける時間というのは本当に短いと思います。私もあと10年後に、今と同じような体力とスピードをもって行動や情報収集ができるとは思えないし、リスクを抱えてチャレンジできるかどうかもわかりません。
確かに保証はないけれど、10年後、20年後の未来づくりに向けて私たち世代は色々な問題にチャレンジしていかなければと思っています。日本の最先端の問題を抱える地方でこそそれらに取り組む意義は大きいと思います。
あと思うのは、生活の最低ラインだけしっかりと把握して、そこを守りながら生活すればどうにかなります。
御手洗は、畑もあって野菜もいろんな人からもらえるし、目の前の海には貝や魚もいるので食べるのには困らない、死ぬことはありません。(笑)
人生は一度きり。自分は未来に何を残したいのか考えます。地域や人、暮らしに寄り添いながらここでしかできない暮らし方を味わい、残すべき地域の宝を後世に繋げる仕組みを創りたいと思っています。
皆様とお会いできる日を楽しみにしております。

井上さんの一日の時間の使い方

6:30 起床
8:30 御手洗へ向けて出発 (呉市内→御手洗 / 車:1時間)
道中、呉市内やお店や下蒲刈島・上蒲刈島(安芸灘大橋を渡って、最初と2番目の島です)の漁師さんから、原材料の仕入れ
10:30 御手洗着・仕込み・協議
11:00 若長オープン
その後、島の農家さんとお話ししたり、尾収屋の準備・手伝い
12:00 奥さんがパソコン教室開催(開催時のみ)
17:00 御手洗出発 (御手洗→呉市内 / 車:1時間)
18:00 食事
娘さんとの対話の時間は最も大切にしているとのこと
22:00 デスクワーク
24:00 就寝
井上 明さん

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