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自ら考え行動する楽しさを育む
「農業・里山体験」と野菜の新流通モデル「小規模農家ネットワークによる近距離野菜事業」

大都会でのキャリアカウンセラー時代に抱いた問題意識に取り組むため,農業を営む実家にUターン。広島市内から約1時間の距離でありながら,水と空気に恵まれた地で,農業・里山体験からスタートし,現在では自ら農業もしながら近隣の小さな農家で採れる野菜を集約して,広島市内の小売・飲食店に直接販売し配送まで行う事業を手掛けています。

大都市から広島へ戻るきっかけは?

ここ(安芸高田市向原町)で生まれ,中学・高校は広島市内の学校に下宿して通学,大学は福岡でした。大学卒業後は,リクルートの関連会社に就職して,大阪,福岡,東京などで営業やキャリアカウンセラーを約9年間やり,その後東京で人材系のベンチャー企業に入社し,約7年間各部門の取りまとめや新事業の開発を担当していました。その間,GCDFというキャリアアドバイザー資格を取得し,転職相談や学生向けの就活支援も受け持っていました。就職や転職という人生の転機で様々な相談を受け,悩みや懸念・希望や思いなどをお聞きするうちに,その状況をポジティブに捉える人とネガティブに捉える人がいることに気付きました。明確な正解がない中での選択。

確かに不安や悩みもあるでしょうが,それを前向きに捉えることができる人の根底には,仕事に対するポジティブなイメージがあるのではないかと考えるようになりました。そして,そのイメージは実は幼少期から形成されていると思える場面に何度も遭遇しました。「小さいときこんな体験があって」とか「小学生の頃に親に仕事を手伝っていた」とか,そんな話を聞くうちに,小さい頃から仕事が楽しいと感じるような体験の場があったら良いのではないかと思うようになりました。
ちょうど,その頃40歳で人生のターニングポイント。職業人としての後半は別のことをやりたいという思いと,福岡・埼玉で生まれた息子・娘に「ふるさと」をつくってやりたいという思いが相俟って,先に家族を実家に帰し,3年の準備期間を経て私もUターンして,実家の農場を使った会員制の農業体験を始めました。

「農業・里山体験」はどのように開催しているのですか?

農業体験では,「自ら考え・行動し・達成する」ことを念頭に置いたプログラムになっています。「農業・里山体験」は,最初は,高校の同級生などに声をかけて始めました。特に宣伝はしていませんが,口コミで評判が広がって,2年目からは,月1回開催し年間延べ300名のご参加をいただくようになっています。
参加者は広島都市圏のファミリーがほとんどで,3〜4年間継続して参加いただいている家族も多いですよ。小学生が多いですが,中学,高校になってもスタッフとして参加してくれる子どもいます。
「福屋(広島市内の老舗デパート)に出荷する野菜をつくるぞ」と発破をかけたりして,「職」や「働くこと」を意識した体験になるよう組み立てています。作業のハードルを高くして達成感を得られるようにしていますから,厳しい面もありますが,そのことが予想以上に楽しいと感じる瞬間を子どもに与えているようです。また,親御さんも「この子がここまでできるとは」と驚かれる場面も多々あります。
農業体験は黒字ではありますが,広げすぎると本質がズレてしまう懸念もあり,今後もライフワークとして続けていきたいと思っています。

「旬の野菜宅配」はどのように始められたのですか?

野菜の宅配は,農業体験をした子どもたちに自分で作った野菜を送ってあげたいと思ったのが始まりです。これが予想以上の反響を呼び東京や大阪からもご注文を頂くようになりました。自分の畑だけでは野菜の種類・量とも足りないので,近所の数軒の農家に呼びかけて始めたのですが,今では34軒の農家から出荷頂くようになりました。近所のおじいちゃんおばあちゃんが手間を厭わず自分が食べたい野菜を作っていますから,おいしくて,しかも安心な野菜ができるんです。また,ここは,太田川と江の川の分水嶺があるように,河川の最上流部にあたり,いい水があるし,空気も綺麗で,昼夜の温度差も大きいので,野菜づくりに適した土地柄なんですよ。

現在ではここの野菜は,広島市内のデパートや飲食店にも納品しています。
かつて経営していた広島市内の飲食店(並木通りにあるdining & bar be)で,自分の畑で作った野菜を使っていたら,その野菜をうちにも出荷して欲しいという飲食店からの依頼が徐々に増え,デパートからも常設の販売コーナーを作ってみないかと声がかかり,本格的に事業にする必要があるのではないかと考えるようになりました。,

現在は近所の農家から,週3回夕方に農作物を集めて,翌朝広島市内の飲食店などに配達するという仕組みにしており,それを独自開発した出荷システム・法人向けと個人向けそれぞれの販売サイト・それを一元管理するシステムで支えています。出荷頂く農家さんは半径10キロメートル以内に限っています。これは農家さんが自分自身で野菜を持ち込める距離という観点で決めており,将来的には,この半径10キロメートルの出荷単位を県内各地に作っていければと考えています。
出荷頂いている農家さんの過半はいわゆる高齢者で,しかも自家消費が中心の規模が小さいところばかり,これまでは販売していなかった方もかなりおられます。そんな方々でも自分が作った野菜に注文が入り,実際お店で提供されるようになると,とても張り切って作ってくれます。毎年,歳は取っていくのに,毎年作付面積が広がっていくという不思議な現象が起こっています。(笑)

ビジネスモデルとしての発展の方向性は?

百貨店や飲食店と本格的に直取引を始めると野菜が足りなくなり,農家グループを拡大しました。すると今度は野菜の余剰が生まれ販売先を増やすことになりました。それを繰り返すうちに扱う規模が大きくなってきて,これはビジネスにしなくてはいけないと思うようになりました。これをするために俺は帰ってきたのだと。途中から夢が変わっちゃたんですけどね(笑)。それで,広島市内の飲食店は一緒に立ち上げた同級生に社長を交代してもらい,事業のモデル化を試み始めたのが2年半前。1年間かけてシステムを構築し,次の1年間で検証をあらかた終えました。現在は事業拡大を前提に業務の再構築を行っています。
システムは前職で培った知識もあり,業務分析や基本設計部分はかなり自身で行うなどして,かなりの低額で開発ができました。使用者自体が設計しているので相当使い勝手の良いシステムになったと思います。これが世の中に通用するのか試してみようと思って,公益財団法人ひろしまベンチャー育成基金による,平成25年度の「ひろしまベンチャー育成賞」(県内約70社が参加)に応募したところ金賞がとれました。
結果的に金融機関や投資会社にこの事業モデルが知れるところとなり,事業資金の借り入れもスムーズにいきました。法人化もして,ようやく事業として面白い段階に入ったかなと思っています。

広島の地域特性をどのように思いますか?

広島は,都市部と山間部が非常に近くにあるという地形なので,豊かな自然の中でとれた野菜を翌朝には都市部の飲食店やデパートへ直接送ることができます。お店には新鮮な野菜が並び,農家は+αの収入を得ることができる。広島の人々が当たり前と思っていることが実はとても贅沢なことだったりします。
買物は安芸高田市内で済みますから広島市中心部に出かけることは少ないですね。でも,なにかの時には大都市が近いという安心感はあります。子供はJRに乗って広島市内の高校に通っていますよ。
近くに有名な観光スポットや景勝地はありませんが,夜明け頃,朝靄に包まれた畦道や山道を散歩すると,それはもう幽玄な世界でそれだけでストレスなんてなくなってしまいます。
趣味でいえば釣りや山登りをしますが,ここでの生活はわざわざ出かけなくても充足されるほど豊かで贅沢。生活のストレスの次元が違うのでバランスをとるために遊ぶ必要がありません。このことは東京から帰って実感しました

最後に,移住を考えている人々へメッセージをお願いします。

移住される方が,このシステムを使って広島県内各地で農業振興に携わって頂けたら最高ですね(笑)
それはさておき,移住は「人生の選択」であり,不安や気になることが沢山あるのではないかと思います。
希望者がいらっしゃれば,ここまで来てもらって,実際に流通・出荷の場面や販売の流れも見たり,お話をすることもできますよ。私自身が元々キャリアカウンセラーですし,実際Uターンした一人として良い面,苦労したことなども実感値でお話ししながら,ご本人がきちんと意思決定をする情報提供などはできるのではないかと思っています。
広島の人は面倒見がよくて,私も「こんなによくしてもらっていいんだろうか」と思うほど,いろいろな人にお世話になりました。
それに広島には先取の気質があり,全産業が揃っているので,業界を問わずチャレンジするぜ!という人にとっては最適な街だと思います。
是非一度広島に来てみて下さい!!

有政さんの一日の時間の使い方
7:00

起床・朝食

8:00

自宅(兼事務所)でデスクワーク

9:00

ミーティング

9:30 農作業

11:30

昼食・仮眠

13:00

集荷業務
出荷農家さんへの注文情報配信

14:00

野菜の収穫、袋詰め、出荷野菜の検品

17:00

野菜販売準備
販売サイトへの出荷野菜の掲載

18:00

野菜販売
実際はネット経由で自動的に受注

20:00

夕食・入浴

21:30

注文野菜の仕分け、納品準備業務

1:00

就寝

有政さんの休日の時間の使い方
6:00

起床・朝食

6:30

納品出発
広島市内

7:45

各店舗に納品

9:30 営業・料理長等との打ち合わせ
出荷予定の野菜情報やメニュー検討など

12:00

帰社(帰宅)・昼食・仮眠

13:30

農作業

18:00

入浴

18:30

デスクワーク

19:30

夕食

22:00

就寝

有政 雄一さん

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