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INTERVIEW

食材の宝庫の海と山、大消費地の都市があり、若い生産者が世界に通じる加工品を生み出している。広島は、料理で何かを表現したい人にとっては最高の舞台です。

島村 光徳さん

兵庫県 → 広島県
2002年
家族3人暮らし(妻・娘) 1972年生まれ レストランシマムラレスプリ・ド・ミクニ 経営/オーナーシェフ ※2017年1月より店名を「Shimalabo」に変更。

フランス料理に憧れ、フランスの食文化にカルチャーショックを受け、関西で修行を重ねて、「身土不二」の思いでUターン。帰広直後は、広島の豊かで多様な食材をつなぎ表現することで、楽しい「食の時間」を共有する文化を広めている。

広島にUターンされるまでの経緯を教えてください。

東広島市/八本松町で生まれ育ちました。幼い頃から絵や音楽がすごく好きで、高校時代、大好きな音楽をやるために、アルバイトで料理の仕事をたくさんしているうちに食の世界に惹き込まれてしまいました(笑)。
18歳で大阪に出て、「まずは寿司でも握ろう」程度に思っていましたが、辻調理師専門学校でフランス料理に出会い、色合いや見た目の華やかさ、スタイルの美しさに惹かれました。フランス料理の定番「鴨のオレンジソース」を初めて食べたときの感動は今でも忘れられません。

19歳でフランスに渡って辻調のフランス校へ入学し1年間を過ごしました。20歳で帰国して神戸の三ツ星フランス料理店に修業を始め、大阪、京都、フランスと修業を続け、30歳で広島に戻りました。今思い起こしても修業時代の13年間はフランス料理のことしか頭になかったと思います。
18歳で大阪に出た時から、30歳になったら広島に帰ってこようと決めていました。「身土不二」と言いますか、水を飲み食べ物を食べて育った場所に戻りたいという本能からだと思います。
それともう一つ、「広島」で何かを表現したいという想いも強くありました。

広島に戻ってからはどこで働かれたのですか?

広島に帰った当初は、働ける場所がなかなか見つからず、正直途方に暮れました(笑)。
でも、幸いなことに、私のUターンと同じタイミングで「ミクニ ヒロシマ」がオープンし、入れてもらうことができました。今は、三國清三シェフから引き継いでレストランを経営しています。
最近では、広島でも、「ミクニ」に続いて本当にいいお店が少しずつ増えていて、10年前とは全然環境が違ってきています。

料理人にとって広島は魅力的な都市ですか?

私はそう思います。挑戦者にとって東京や大阪よりもチャンスが多い都市ではないかとも思います。
広島には、お好み焼きや牡蠣などのインパクトの強い食べ物があり、B級グルメの印象が強いです。観光客のニーズもそちらに偏っている気がします。その分、フランス料理のような繊細なものは、なかなか表に出てきづらいです。
広島は、車で30分から1時間走ればちゃんとした田園も海があり、海や里山の新鮮でいい食材がすぐに手に入る素晴らしい地域環境があります。ただ、こんなに海も山も近いのに、広島の都心から見ると案外埋もれていてなかなか見えないところもあります。

私は、素材の発掘の際には必ず現地に伺い、そこからお付き合いをさせてもらいます。伺うと多種多様な文化が埋もれている場所を見つけることがたくさんあります。
お肉でいうと、自然放牧している貴重な牛や山羊を育てている方々や仔羊を食肉用に育てておられている方がおられます。仔羊は岡山・島根・鳥取にもいないですし、山羊も沖縄以外で食べられるところは少ないと思います。
そして、ワイン、日本酒、肉、野菜、魚など食材はなんでもありますし、これらの食材や料理を発信し消費できる都市の規模があります。
一方、最近では、チーズやワインなどでも、世界に通じるいいものをつくられる方がでてきていますが、それらをどうつなげて都市部で形にしていくか、表現していくかが、まだまだ発展途上だと思うのです。
でも、発展途上だからこそ、挑戦したい人には、やりがいのある場所だと思います。

消費者の食文化について、広島はどう感じられますか?

フランスでは、食に対するこだわりがあり、食に携わる人々の社会的地位も高くて、食に関するすべてがすごく大切にされています。
料理学校にシェフが来られた時には、それはもうみんなの憧れの存在でスター・アイドル扱いですよ(笑)。
「地産地消」「安心安全」「旬のものを食べる」という当たり前のことを大切にしていますね。フランスは自給率100%の農業国であり、食への考え方が文化として根付いています。世界を引っ張る文化に19歳の若造が飛び込んでいった時には、カルチャーショックを受けました。

フランス人の食に対するこだわりをずっと見てきているので、その人たちと比べると弱いかなと思いますが、広島でも、昔と比べるとお客様も随分目が肥えておられます。
昔はフレンチってどこかヴェールに包まれていて「これがフレンチか? すごいな!」という感じで食べていただいているような雰囲気がありましたが、今は皆さんよくご存じなので、どこまで僕たちが分かったものをお出ししているかという部分が求められます。
フランス人は家族や友達とテーブルを囲みワインを飲んで「食の時間」を共有することを大切にしているし、それが日常の中に溶け込んでいます。広島でそのような文化が根付いていけばと思いますし、広島のレストランは、質の良いものを出すのは当たり前として、その手助けとなる場でありたいと願っています。

プライベートで広島の魅力を感じられることがありますか?

料理の世界は拘束時間が長いので、なかなかプライベートで時間をとって遊びにいくことが難しいんです。
そんな中で、アーティストの方や食材の生産者の方が店に来られた時には、現地のアトリエやお店を訪ねるようにしています。休みの度に訪ねるようにしていますので、仕事が趣味になっているような感じですが、神戸出身でパティシエの妻と一緒に回っています。
それから、広島市の郊外に住んでいますが、子育て環境としてはとってもいいと思います。地域にコミュニティがありますし、隣の人がうちの子どもを怒ってくれます。広島の人は人間がとんがってなくて柔らかいけど、それぞれ自分を持っている感じがします。
そして、自然も近くにあって発信先の都市部もコンパクトに存在しているので、やりたいことがハッキリしている人にとっては、何でも手に入るし、人とつながりやすいので、思いを体現しやすい場所かなと思います。

広島への移住を考えている方へメッセージをお願いします

広島は、特に料理人にとっては、何でも揃って完結できる場所。
発信する場所と素材の現場が共存し、意志を持った料理人にとっては「表現しやすい場所」です。
スピード感もいいしプライベートと仕事の両立も、すごくやりやすいのではないかと思います。
自分でお店を持ちたいと思う料理人にとっては、広島はすごく恵まれた場所といえると思います。
「迷うんだったら広島でやった方がいいよ。」「やれるよ。」ということを伝えたいです。

仕事の日の過ごし方

8:00 起床
9:00 出勤前 気分がいい時は河川敷などを犬と散歩
10:00 出勤/ランチ仕込み・営業
※通勤は車です
15:00 アイドルタイムに打合せ
18:00 ディナー営業開始
22:00 仕事終了
24:00 晩酌して就寝
島村  光徳さん

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