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INTERVIEW

大都市の企業に勤めながら、中国山地に囲まれた田園地帯で「ファブラボ広島安芸高田」をオープン。3Dプリンタなどのデジタル工作機械による「ものづくり」で、地域社会との関わりづくりを進めている。

渡辺 洋一郎さん

鳥取県 → 広島県
自動車会社勤務 ファブラボ安芸高田 オーナー 家族3人暮らし(妻・娘) 1980年生まれ 

広島市内の企業に就職し郊外に住んでいたが、一個人として地域に関わりたいとの思いが湧き、安芸高田市吉田に移り住む。「デジタルファブリケーション」に出会い、「ひとりひとりのオンリーワンを自分で創るという考え方を浸透させて社会貢献をしたい」との思いから踏み出した一歩で、生活はより快適になりました。

広島市内から安芸高田市に転居された理由を教えてください。

鳥取市で生まれ育ち、大学入学と同時に広島に出てきました。その後、広島の自動車会社に就職して、エンジニアとして仕事をしています。初めは、広島市安佐南区に住んでいましたが、3年前に安芸高田市吉田に引っ越してきました。
入社以来「ものづくり」に携わってきて、リーマンショックや様々な出来事を経験していく中で、一個人として社会や地域に関わっていきたいという気持ちが高まっていました。
「一人の社会人として、社会と向き合い好転させていくために何ができるのだろう?」と模索していた頃、「デジタルファブリケーション」に出会い、その可能性を自ら体現しようと決めました。
しかし、その「環境」を構築するには設備導入や建屋の改装などにお金がかかります。
広島市内よりも生活コストが安い場所、しかし、会社を続けながら新しい挑戦ができる場所、また子供にとってもよい環境・・・などと条件を出して検討していくと、最適な場所がここ安芸高田市でした。

安芸高田市での生活はいかがですか?

幸い妻の実家にも近く、家もすぐに見つかりました。この家は、自宅でもありファブラボの拠点でもあります。空き家物件を譲ってもらい、大工さんと一緒に改装しました。
私は毎日会社まで車出勤していますが、片道約1時間。実は広島市内に住んでいたときとほとんど変わらないのです。しかも、渋滞もないので楽ちんです。
妻の通勤時間はもっと短縮され、 30分以上かかっていた通勤が10分になりました。しかも、妻の実家が近いので、子育てを両親にも手伝っていただけるようになりました。子供も外遊びが大好きなので、以前よりものびのびしています。

一個人として社会や地域に関わる方法としての「デジタルファブリケーション」について、詳しく教えてください。

私の工房は「ファブラボ広島安芸高田」といいますが、「ファブラボ」とは、3Dプリンタやレーザーカッターなどの工作機械を備えた一般市民のための工房の世界的なネットワークです。
「Fab」には「Fabrication(ものづくり)」と「Fabulous(愉快な、素晴らしい)」という2つの意味が込められています。
ファブラボは、次世代のものづくりの「インフラ」だといえます。
インターネットの普及によって、設計図データは一瞬で世界各地に届けることができますから、データに基づいて、モノを自動的に作り出せるインフラが各地に普及することで、誰もが自由にものづくりを行えるようになることが期待されています。

「ファブラボ広島安芸高田」での活動について教えてください。

ファブラボ広島安芸高田には、3Dプリンタとレーザーカッターを置いています。現在の私の活動は、初めてこういう機械を扱う人、何かをつくりたいという人を対象に、基礎的な指導をしています。
まだ、3Dプリンタの基本を勉強できる工房は広島にあまりないので、土日の講習会には、主に広島市内から人が集まってきて来られます。
例えば、手が少し不自由な方が使えるオリジナルのお箸を作る等、工業製品から自分に合うものを探すのではなく、3Dプリンタで「個人のために必要なものを自分なりに手軽につくる」ことが実現できる時代になってきたんですね。

企業がものを作る場合には、そのほとんどが大量生産なので、万人を対象にしたものが中心になります。それぞれの地域にファブラボのような施設がたくさん立ち上がると、いろんな人が身近なもの、一人ひとりのニーズにマッチしたオンリーワンのものが比較的安く作れるようになります。
このような中で、地域社会を変えていくような関わりができればと思っています。
安芸高田市でこれから力をいれていきたいことは教育です。「ゼロ」から「イチ」を生み出す思考、そのプロセスを子供たちには身に付けて行って欲しいと考えいます。それが将来における地域・社会を豊かにする源泉だと思います。そのための取組も実施していこうと考えています。
ここには、近所の子ども達が入ってきたりして交流もあるし、近所の繋がりもありますから、町の人に新しい技術を田舎の生活の中にどう取り入れられるかを理解してもらって、ものづくりをもっと身近にし、生活の中に取り入れていけたらと考えています。

安芸高田市吉田の生活環境の良さとはどのようなところでしょうか?

広島市中心部は土地が高くスペースも見つけるのは大変ですが、少し奥まった場所に行くと、土地がたくさんあるし、集中できる環境があるのがメリットだと思います。何かを始める上でも、場所とお金が比較的かからずに済みます。
実際に私自身も広島市安佐南区にいたときよりも、こちらに移り住んでからの方が集中できています。道は混まないどころか、ほとんど車が通らない(笑)。子供も遊び放題でいい環境です。
広島市内に通勤しているのですが、買い物は地元・吉田の中心部でほとんどまかなえます。買い物のために広島市内に行くのは、3か月に1回くらいのペースでしょうか。
ドライブが好きなので、安芸高田市や三次市の山の中をぐるぐる回ることも多いです。また神楽門前湯治村や高宮湯の森など、安芸高田市内の温泉に行くこともあります。

移住者を検討している方へのメッセージをお願いします。

私の場合は、幸いやりたいことがあって、やれる場所もありました。
広島県の中でも一歩奥に入ったおかげで、空き家を見つけて上手く活用でき、子育てや生活をする上で利便性も良くなりました。
東京では、まず家ひとつ借りるにもお金もかかりますが、ここでは多少の制約があるにしても、安く借りられてネット環境もありますので、投資も少なくてすみます。
空き家を活用して、できることは極力自分たちで作業をするというカタチでリノベーションしたり、自然もいっぱいあって待機児童もゼロ、子供ものびのびと暮らせるし、やりたいこともやりやすい場所だと思います。
私の場合は、本業とファブラボでの活動が「ものづくり」という点で共通していますが、このような生活によって、「今ないものを創る」というような考え方が本業にもいい影響を与えているように感じています。
何か新しいことを始めるときは、不安もあり中々踏み切れないことが多いですが、好奇心と一歩を踏み出す勇気があれば壁は乗り越えられると思います。

平日

7:00 起床
7:30 出勤
9:00 仕事
20:00 仕事終了
21:00 帰宅、その後デスクワークや読書など
26:00 就寝

休日

7:30 起床
9:00 公園や散歩などにいき、子どもと遊ぶ
12:00 昼食
13:00 ファブラボ 3Dプリンタ、レーザーカッタ等の講習会
18:00 家族と夕食
21:00 デスクワークや読書など
25:00 就寝
渡辺 洋一郎さん

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