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INTERVIEW

戦艦大和の技術が息づく広島で、ゼロからの起業。 地元造船所の職人とともに商船技術の継承と革新を。

山口 太一さん

東京都 → 広島県
2016年
1988年山形県生まれ 株式会社FRONT MISSION 代表取締役

船の世界に憧れて造船業界へ飛び込んだ山口さん。2016年、理想の仕事を求めて東京からIターン、そして(株)FRONT MISSIONを立ち上げた。現在は、船舶構造のジェネラリストとして造船に携わっている。縁もゆかりもない広島で、モノづくりへのプライドをかけた事業が始まった。

広島に来ようと思ったきっかけを教えてください。

私の仕事は船の構造検討や強度計算、設計図書の作成が主で、造船所の設計者の方等とタッグを組み、高品質で現場トラブルのない船造りを提供します。東京で勤めていた総合エンジニアリング会社は船舶以外の部署(建築や車、原子力やプラント設備等)もあって。その中でさまざまな設計案件に携わらせて頂いたお陰様で、私個人も一技術者としての視野を広げて頂きました。一方で、一船の設計室としては、顧客の専門性を学ぶ機会が少なくなり、業界の最前線にいるお客様に、相応の技術提供をすることが難しいとも感じていました。そんな中、最も大切にしたかった造船業界のあるお客様から「山口さんの会社に仕事を出す価値がないと社内で言われている」という話を聞き、それをきっかけに仕事の在り方から今後の人生について悩み、結果、会社を辞めようと思ったんです。

辞めた後に具体的に何が出来るかを考えようと思い、仕事をしながら民間の事業化スクールセミナーに通い始めて。船の仕事をしたいと思う一方で、もっと社会に貢献できることをしたいという気持ちもあって、それが折り合うところを探しました。いろいろと悩みましたが、造船に特化した事業を起こして、業界に貢献する人財を増やすというのも、一つの社会貢献かなというところで最終的には落ち着きました。そこで、辞めたら次どうするかを考えた時に、旅行で訪れたことのある「広島」が頭に浮かんで。どこかに身を移して一から始めるのであれば、広島がいいなと思ったんですね。

広島のどこが魅力的に見えたのですか?

現在の造船には、戦艦大和を造った先代の技術が生きている。その技術を継承されている業界の方たちが瀬戸内海には集積しているので、モノづくりへのプライドも高く、ベテランの技術者もたくさんいると考えました。これだけ造船業が盛んな場所はなかなかないので面白い。そんな広島で造船の仕事を一生掛けてしていきたいと思いました。

また、独立するにあたり県外にも出張等で出やすい場所、新幹線での移動ができる交通の便がいいところも一つのポイントでした。あとはやっぱり、この街並みですね。広島はある程度街の規模が大きいけど、全部が都市ではなく、川もあって、海も近くて、少し外れると自然に囲まれたたくさんの魅力的なものが、すぐ触れ合えるところにある。街と自然とのバランスがすごくいい、住みやすそうだなというイメージがありました。

起業や移住にあたりどのようなアクションを?

仕事を辞める半年ぐらい前、2016年の夏ぐらいに大まかなビジネスプランを作り始めました。広島で大体こういう流れで仕事をするというのを固めて、じゃあ次は実際に広島に移住することを考えようとなって。インターネットでも調べてみましたが分からないことも多かったので、有楽町の「ひろしま暮らしサポートセンター」へ行き、サポーターの平野奈都子さんにまず相談しました。住む場所はもちろん、事務所を構えるのか構えないのかということも考えないといけなかったので、まずは何からしたらいいですか、と。起業に関しては、ひろしま産業振興機構が手掛けているひろしま創業サポートセンターを活用しました。そのサポーターの一人である福田さんという方を紹介していただいたんです。最初にしたのは、一先ずのゴール(目標地点)をどこに置くか。私は、いつ家を探して、いつまでに移住して、そうしたらいつ起業できる、また、それを逆算して、この日に起業するとしたら、いつまでに移住して、いつまでに家を探すのか。その3つを決めるのが最初のステップでした。

その時に、広島に一回行ってみたいということも相談しました。今度は仕事をすることを頭において、街の雰囲気を見たかったのと、アクセスが良く、セキュリティの高い仕事環境、それと移住先の住まいを探しに。そこで「移住者向けの片道交通費支援制度がありますよ」と教えていただいて、実際に広島へ行くことにしました。
まず、福田さんから紹介していただいた地元の不動産屋さんを訪ねて、住まい探しを始めました。事業については、初期に事務所を構えるのは資金的な負担がかかるので、最初はシェアオフィスから始めたいと考えていて、いろいろとシェアオフィスを探しました。また、福田さんから、スタディツアーという地方自治体が企画する、現場体験学習が近々あることを教えていただき、大崎上島の造船所を見学させて頂きました。私の場合、移住と起業の次には事業の見込み顧客を作る、という課題があったので、そこに繋がる入口というかチャンスが欲しかった。ツアーで繋がった造船所の方とは、まだお仕事の関係までには至っていないですが、スタディツアーそのものは、現地の人の話を聞けたり、実際の造船現場の見学ができたり、とても良い経験になりました。

実際に移住してみて、いかがですか?

まず気持ちの面が違いますね。例えば、通勤が苦じゃなくなりました。私の利用している交通機関はほとんど混まないし、降りた後は川を眺めたり、その季節で色付いた木々の間を通えます。東京にいたころは、通勤で疲れが溜まるということがありましたが、自然を目にしながら通えることで気持ちが和らいで、帰宅後もリフレッシュした気分で過ごせるようになりました。ほかにも、広島は空が広く感じるというか、街中にいても開けている感じがするのもいいですね。広い道路に路面電車があって、歴史的なもの感じられる場所もあって。そんな中でも、山が見えたりちょっと外れたら大きな公園があったりと、自然に囲まれているような気持ちになるし、本当に良い街だなぁと思います。

将来のビジョンはありますか?

年に一名のペースで規模を拡大して、お客様の前線を任せて頂けるような設計チームになります。1つの思想として、お客様の元(造船所)に入り込んだエンジニアが、お客様の設計人財不足に貢献すると共に、チームを先導して、責任ある仕事を提供する、そんな設計チームを創りたいと考えています。地元企業にも必要とされる企業を目指したい。どの造船所にもその造船所ならではの特徴があるんです。図面の書き方一つ取っても違いますし、造り方も違います。その多様性を学習し、地域の造船所にも貢献する設計チームを作ります。

また、一仕事場として、時間の制約(例えば、子育てや介護)があって仕事が見つからない方々にも、やりがいを持って仕事が出来るよう、規模の拡大・体制を整えていきます。実際に現在、派遣で来て頂いている従業員の方は、労働時間の制約があるだけで、図面を描く知識や専門能力を持っている貴重な仕事仲間です。今後の造船業界に、そのような方々に能力を活かして頂ける仕事場をつくるというのも、私の一つの役目だと考えています。

移住や起業を考えている方にアドバイスをお願いします。

都内の方であれば、まずは有楽町の「ひろしま暮らしサポートセンター」へぜひ相談しに行ってほしい。やはり、インターネットで調べるだけだと情報が拾いきれないものです。そこで、セミナーなど移住者の話を聞けるチャンスをチェックしてみてください。自分と同じような環境や境遇で生活していた人が、実際に行ってこう思ったという体験談は、より移住後の自分をイメージしやすくなると思います。あとは実際に足を運んで、街や人と接して肌で感じてみるのが大切のように思います。

私は、広島に移住してみて、他人事でも親身に気にかけてくださる方が多いなと感じています。例えば、仕事の話で営業に伺ったとき、お断りの言葉を頂くときでも、「あの会社だったらもしかしたら」というように気にかけてくださる方がいます。そんな人の温かさを感じる土地なので、ぜひ積極的に動いてみてください。

<取材・撮影協力>
レンタルオフィスRegus ひろしまハイビル21
https://www.regus.co.jp/

平日

7:00 起床
9:00 出社
18:00 定時
20:30 残務整理などを済ませて退社
21:00 帰宅、自由時間
23:00 就寝

休日

9:00 起床
家事、私用など
12:00 昼食
13:00 残務整理 or 自由時間
ショッピング、まんがや映画鑑賞、楽器などその日の気分で趣味を楽しんでいる。
19:00 帰宅、自由時間
23:00 就寝
山口 太一さん

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