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INTERVIEW

西日本に手づくりハム・ソーセージの文化を。 山あいの店が伝える本物の味が若者の新たな取組の起点に。

山崎 泰宜さん

東京都 → 広島県
1979年生まれ ハム・ソーセージ店「グリュックスシュバイン」経営 家族2人(妻)

趣味だったハム・ソーセージづくり。関東での修業を経て,2013年に独立開業を果たす。勝負に選んだ場所は,満天の星空が広がり谷あいの川にはホタルが飛び交う安芸太田町だった。地域に新たな食文化を発信し,その周りには若者の新たな取組の連鎖が生まれている。

ハム・ソーセージ専門店を広島ではじめた経緯は?

僕は,20歳頃から趣味でベーコンやハムを作っていました。人にあげると喜ばれるのが嬉しくてこだわりを追及していくうちに,商売としてやっていきたい思いが強くなっていきました。サラリーマンだった当時,転勤で関東に移り住み,そこで出会ったのが「厚木ハム」でした。私にとってこの出会いは,衝撃的であり人生のターニングポイントとなりました。
関東には,手づくりハム・ソーセージの店がたくさんあります。特に私がいた神奈川県は,特に専門店の激戦区らしく,住んでいた厚木から車で少し走ると何軒もお店がありました。当初は広島に戻るつもりはなく関東で独立しようと思っていましたが,一方で郷里への想いが胸にくすぶっていました。
ドイツ製法の味を研究していくほど,この本格派の味は広島ではなかなか出会えない。
地元広島の人たちに本当に美味しいものを食べてもらいたい,ハム・ソーセージ文化を広めたいとの思いから一念発起し,独立開業するために移住を決めました。

安芸太田町を選んだ理由は?

手づくりハム・ソーセージの製造・販売の店を構えるにあたっては,煙が出てもいいこと,人の動きがあること,高速道路のI.Cから近いことなどが場所を選定する条件でした。また,設備投資がかかり資金的にも厳しかったので家賃が運営に支障をきたさないというのが最優先でした。
安芸太田町には何の縁もありませんでしたが,知人の紹介がきっかけで安芸太田町に出会い,すべてではありませんが店を出す条件を満たすこの地に店を構えることを決めました。

開業から1年。お店の経営はいかがですか?

開店当初は場所的に田舎で人口も少なく,高齢化が進んでいるところなので経営的に厳しいかなと思っていましたが,広島市内から高速を使えば50分くらいの距離ということもありわざわざここだけのために来られるお客様やドライブがてら来られるお客様がいらっしゃり驚きました。
また,開店から多くのメディアに取り上げていただき,その反響にも驚かされました。その理由が「広島一高齢化が進み,人口が少ない地」で開業したことが大きな要因なのかなと思います。もし同じように店を街中に出していたら,あまり目立たず注目されていなかったかもしれないなあと思うこともあります。

現在は広島市内の飲食店・食材セレクトショップ,福山市や三原市の酒屋等でも扱っていただいております。取引先の拡大については,自ら営業活動をすることはありません。というのが,そのお店の人に実際に味を気に入っていただいた方が,そのお店に食べに来られたお客様により気持ちや味が伝わりやすいという考えからです。実体験から自分が好きなものや好きな味というのは人に紹介するとき,心から薦めたいと思いますし,気持ちや味を伝えやすいからです。
現在種類は30種類くらい常時並べていますが将来的には40?50種類へ増やし,よりお客様に選ぶ楽しさを感じていただけるようにしていきたいです。

安芸太田町に移り住んで良かったことは?

広島市内から1時間もかからないところに,1000mを超える高い山があり,びっくりするほど透明度が高い川があります。妻は東京出身ですが,家のすぐ近くの川がものすごくきれいで,ホタルが飛んでいることに感動しています。また川がきれいというだけではなく,ハム・ソーセージづくりには水がとても重要ですので,安芸太田町の水道水の美味しさには感激しています。生活面では,近くにスーパーマーケットが2店舗あり,日用品の買い物に不便はありません。毎週のように,広島市の中心部や郊外のショッピングモールに出かけていますが,特に時間的な負担はありません。
ハムやソーセージづくりは,設備投資に多額の費用がかかります。機械も本場ドイツから輸入しなくてはなりません。そのような条件下で,広島市内中心部の家賃(20?30万円)は,僕達にとって現実的ではありませんでした。ですので,家賃の安さに大変助かっています。
安芸太田町ではライフコストが安いので,いろいろなことにお金をかけられます。
それから安芸太田町に来て,いろいろな人といい出会いができました。もし,都会で店を出していたらこのようないい出会いはなかったかも知れません。

すぐに地域に馴染めましたか?

住んでみて分かったことは,同じ町内であってもそれぞれに独立した地域があるということです。私にとっては一括りの町だけど,住んでいる人からするとあっちの町とうちの町は違うみたいな。根付いた独特の文化や雰囲気があって,地元愛みたいなものを感じました。とはいえ,私たちにとってありがたかったのは,地域の方が私たちのことを気にかけてくださったことです。
地域では,お祭りや花田植,消防団の活動などいろんな活動があります。でも,まずは商売を大事にして,余裕が出たらそういうイベントに参加しなさいと言ってくださいました。この店は,妻と2人でやっているので,イベントに参加してしまうと,その都度お店を休まないといけなくなります。本当にありがたいことです。

僕達も地域で何かあるときには,可能な限り出るようにしようと思っています。
町の活性化については,一度地元を出て戻ってきた若者とか移住してきた人が多いような気がします。私の店の前には,Uターンの方がうちのソーセージを使った本格ホットドックの移動販売車を出され,その方に相談した若い人がクレープ屋さんを始める動きもあります。
そのように町内の若い人がつながって,新しい取組がいろいろと始まっているのはうれしいことです。

田舎への移住を検討中の方へ、メッセージをお願いします。

私も開業1年なので偉そうなことは言えませんが,田舎暮らしへの単純な憧れだけではやっていけないと思います。田舎暮らしは,全然スローライフではありません。とくに夏は,草を刈っても刈っても生えてくるので毎週のように草刈りをしなくてはいけない。ここに至るまでにはたくさんの苦労がありましたが,私たちは目標があったので,乗り越えてきました。
今では,全てのことが,素敵な出会いや経験をさせていただくためだったのだと理解し,お世話になった皆様に感謝しています。
やりたいことがあるなら,ぜひ挑戦する価値があると思います。

山崎さんの一日の時間の使い方

山崎さんの休日の時間の使い方

8:30 起床
取引先のお店などへ
広島市内等 買い出しなど
20:00 帰宅
24:00 就寝
山崎 泰宜さん

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