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INTERVIEW

自分の店を持つなら、東京より広島の方が楽しいはず。 気鋭のジュエリーデザイナーが、広島が新しいファッション文化で賑わうよう、若い仲間たちとつながりはじめた。

橋本 陽生さん

東京都 → 広島県
2013年
シルバーアクセサリーデザイナー ジュエリーデザイナー HYRON WORKS オーナー 1983年生まれ

子どもの頃からファッション好き。上京してジュエリーデザイン専門学校で学び、ジュエリー制作会社で海外ブランドのリペアやブライダルアクセサリーの制作を担当。広島にUターンして、自身のブランド「HYRON WORKS」を中心に取り扱うシルバーアクセサリー店を経営しながら、同世代の仲間とつながって広島の街をファッションで盛り上げようとしている。

広島にUターンした経緯を教えてください。

広島都市圏内にある府中町で生まれて高校まで過ごしました。
中学生の頃、世の中がファッションで盛り上がった時期があって、ファッション好きになりました。また、子どもの頃から手作業でものをつくるのが好きだったので、シルバーアクセサリーに惹かれていきました。
その頃から、やはり東京はなんでもあって、色々な人が集まる街だと思っていました。様々な人から刺激を受けて、自身のスキルを高めるとともに、制作意欲を失わない環境に身を置こうと思って20歳の時に上京しました。

それまで、地元・府中町から出て生活をしたことがなかったので、すべてが刺激的でした。
アクセサリー制作に必要な材料もすぐに質のいいものが手に入るし、工具も色々マニアックなものまで売っています。自分にとって東京は、すごく合っている街だなと思いました。
かねてからの夢であった、自分のお店をそろそろ出そうかと考え始めたときに、まずは、場所について東京か、広島かで悩みました。
利便性を考えると圧倒的に東京なんですよね。材料も手に入りやすいし、色々な展示会などもある。ブライダル企業やセレクトショップもたくさんあるので、仕事としての活動は東京の方がしやすい環境にはあったかもしれません。
ただ、現実的な問題として、やはり東京は初期投資にお金がかかってしまいます。いまは、ECサイトなどを開設すればインターネットを通じて販売は可能ですが、自分の制作する環境という意味でのお店でもあるので、色々なこだわりがありました。
でも、それだけではなくて、確かに昔はファッションでは東京が「最強」でしたが、ネット販売なんかができるようになって、今ではそうでもなくなっています。それならば、広島の方が楽しいはずだと思ったんです。
そんなことも考えながら、広島に出店して定期的に東京を訪れるという、二拠点のスタンスに決めました。

広島の若者のファッション文化をどうみていますか。

昔は、広島市街地中心部にある袋町などに、ファッション系の面白い店がたくさんありましたが、最近、袋町がファッションの街から飲食の街になってきました。そして、ファッション系の大手が入ってきて、楽しい品物、面白い品物がある店が減ってきているように思います。
でも、若いものづくりの人たちはいなくなったのではなくて、ちょっと郊外に動いているようです。郊外の方が家賃が安いのと、中心部から離れても人が来るのが理由だと思います。
そして、そういう人たちが自然につながってきています。地元のバイク屋で自分がシルバーアクセサリーの店をしていることを話していたら、店主がオリジナル靴をつくっている方を紹介してくれました。どの店でも、お客さんのうちで合いそうな人同士を引き合わせるようなところがあります(笑)。

そういうネットワークの出来やすさは、広島のような地方都市ならではで、東京では難しいと思います。ここでは放っておいても知り合いが増えて、ありがたいことに、知らない間に宣伝に協力してくれていたことも多々あります(笑)。
広島のファッションアクセサリーはこれからです。広島にもいろんな人がいるけど表には出ていない。広島から全国区の知名度のブランドが生まれていったらいいと思います。ここ宇品や、広島駅周辺、十日市、土橋など、広島市街地の中心部をぐるっと囲むように、小さな店の集積ができて、それぞれが個性のある街になっていけたらいいと思います。

シルバーアクセサリーは、メンズ寄りのアクセサリーで、女性ものに比べるとはるかに市場が小さい世界です。またバイク寄りのところもあるので、好きな人は限られるところがあります。
広島に戻ってきた動機としては、経営的な安心感というものが大きかったのですが、東京でジュエリー会社に勤めていた時よりは収入はあります。そもそもジュエリー会社の待遇はよくないので比較するのもどうかですが…(笑)
仕事は、自分のブランド「HYRON WORKS」の製作・販売、結婚指輪などのオーダーメイドの受注、東京の友人のブランドの製作を請け負うOEMの3本柱でやっています。

私はチャラチャラしたものが嫌いで、ビンテージのいいものを今でも使えるものに作り替えたり、工業的なデザインでかっこいいものをアクセサリーに持ってくるようなことが好きです。
「アメリカの古着に合わせたアクセサリー」のように、洋服や小物とのコラボには需要拡大の可能性があるかもしれません。カフスやネクタイピン、革製の財布のボタン、時計のベルトなど、面白いものを作ってみたいです。
実際にこういう地方都市でお店を出していると、東京とは違う意味での「強いネットワーク」があると感じており、きっとできるような気がしています。

先ほど話したオリジナル靴をつくっている人、最高音響で音楽を聴かせて料理もおいしい店をやっている人、ビンテージ古着屋、ディスプレイ用の花のオーダーメイドをやっている人など、お店を出して頑張っているいろんな人と知り合いになりました。
業種は違えど、身を置く環境はすごく似ていて、お互いを助け合う地域ならではの強い絆というものがあります。しかも、お店側の人だけではなく、そのネットワークにお客さんも入っているというイメージです。
「みんなで地域を盛り上げて行こう」という人が周りにいることが自分にとってはとても幸せなことです。これは、東京だと少し感じにくいことだったかもしれません。

こういう知り合いの店を回る街歩きも、休日の楽しみのひとつです。広島を通過していく観光客を引き留めるために、みんなでゲストハウスをつくりたいなあなんて話もしています。
それからバイクが趣味なので、バイク屋のお客さん同士でツーリングに行ったりします。朝までアクセサリー製作をしているとき、ちょっと山道を走ってくるといい息抜きになったりします。
店は海の近くですが、バイクだったら10分で広島市の中心部に出れるアクセスの良さです。材料や工具をすぐに購入できたり、夜は仲間とお酒を飲んだりして楽しんでいます。この自然と都市機能のバランスも、僕のような人にとってはベストな環境であり、広島っぽさを感じます。
夏は店の近くの港で花火大会がありますので、みんなでお店から花火を見たり、冬はスノボに行ったりとプライベートも楽しんでいます。

移住を考えている人にメッセージをお願いします。

広島は僕の地元だからやりやすいという訳ではなく、自分でお店をやり始めて、広島がいかに素晴らしい環境なのかということに改めて気が付きました。
生活環境を変えて、新しいことにチャレンジするということは素晴らしいことですが、現実的な不安も当然あると思います。
ただ、移住後に地域でつくられていくネットワークは、みなさんが思っているよりも強いものだと思います。色々な経験をした人たちが集まっているので気負わずにやりたいことにどんどん挑戦してほしいです。失敗したらまたやり直せばいいだけですしね。

橋本さんの一日の使い方

11:00 起床
バイクでお店に向かいます
13:00 開店
アトリエで制作しながらお客さんを迎えます
20:00 閉店

20:30 食事
バイクで10分程度,「音楽食堂ondo」へ食べに行きます
22:00 お店へ戻る
ひたすら制作に打ち込みます
5:00 帰宅
橋本 陽生さん

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