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INTERVIEW

瀬戸内を「ワクワク」する空間へ。 誰もが真似できる地域活性化のモデルケースを作っていく。

高掛 智朗さん

東京都 → 広島県 
2013年
1977年三原市生まれ 産直マルシェTORO・瀬戸内隠れ家リゾートCiela 代表 家族2人暮らし(妻)

現在、会社員として働く傍ら、瀬戸内のエコリゾート化に励む高掛さん。東京で身に付けたITとクリエイティブスキルを活かし、瀬戸内に新たな魅力を生み出そうとしている。

東京から尾道へ、Uターンのきっかけを教えてください

広島県三原市で生まれ、高校卒業まで地元で育ちました。大学時代は大阪で過ごし、社会人になって東京に出た後、2007年にIT企業のサイバーエージェントに入社し、Ameba(アメーバ)などのエンターテインメントを中心に、広告やメディアに関わる仕事をしていました。
順風満帆に仕事をしていましたが、2011年3月11日に起きた東日本大震災でこれまでの考え方が一変いたしました。混乱が続く状況下で、「自分のスキルを世の中のために使いたい」という想いが強くなり、震災後の社会活動の一貫として西日本の野菜を販売する「産直マルシェTORO」を世田谷区三軒茶屋で出店しました。同時にソーシャルビジネスに関心を持ち、島学や農業ビジネスデザイン、コミュニティデザインを学び、本格的に社会問題を解決していく取組みを考えるようになりました。ちょうどその頃に結婚もして、2人の人生も踏まえて瀬戸内で暮らす決意をしました。

2011年末、活動の拠点をどこにするかを決めるためにリサーチを進める中で、「瀬戸内のブランド化」「瀬戸内 海の道構想」「尾道を中心にサイクリストが増える」といった情報が次々に入ってきて、これから瀬戸内エリアが伸びてくる!と確信を持ちました。これが尾道を選んだ決定打でしたね。
尾道の中で活動の舞台に百島を選んだのは、直観的な要素が大きいかもしれません。実は、東京に住んでいた頃、理想の暮らしを手帳に描いていたんです。
家の前に砂浜があって、魚釣りのできる防波堤があって、農園ができる山があって。活動拠点を探す中で、たまたま百島に訪れる機会がありピンときました。島に立った時の空気感、海の匂い、温度など、自分の感覚が「ここだ!」と反応したんです。百島は自分が描いたイメージそのままでした。

広島ではどんな活動をしていますか?

平日は会社員として働きながら、土日を利用して地域活性化につながる活動を行っています。主に、自然と親しみ自然と共生する“エコリゾート”という空間を瀬戸内に作るプロジェクトを進行中です。“エコリゾート”といっても、その土地にあるものを、うまくリノベーションして活用する。
新たなハコモノを作るのではなく、その土地にあった建築物、自然景観を活かし、魅力的な空間に生まれ変わらせることを目指しています。
その最初の事例が、一棟貸しの滞在施設「瀬戸内隠れ家リゾートCiela」。尾道で暮らし始めてすぐに百島の空き家を購入して、2年がかりで家族や友人と一緒にリノベーションしました。Cielaでは、サンセットを見ながら砂浜でディナーを食べたり、星空の下でシアターを楽しんだりと、自然をコンテンツにした非日常の空間を提供しています。2016年の1月にオープンして以降、これまで(2017年1月)約50組300人近くのお客様に利用いただきました。これだけ多くの方たちに魅力的に思って頂けたという事に、今後の可能性を感じています。

また、2016年は、島の耕作放棄地を農園にするためクラウドファンディングにも挑戦しました。瀬戸内エリアには空き家や耕作放棄地の問題がたくさんあります。この農園は耕作放棄地の活用はもちろん、農業の「生産者」と「消費者」が「提携」という形で一緒に生産に関わることで、新たな生産者と消費者の関係を作ることを目的としています。 
このほか、体験型観光モデルを推進する「瀬戸内Glamping」、瀬戸内の旬の食材を楽しめる「瀬戸内美食倶楽部」、耕作放棄地を活用した「高掛農園」なども進行しています。2017年の5月には、農業ビジネスを一緒に学んだ仲間と瀬戸内の離島で「養蜂」を始める予定です。これらの活動を通じて、大きな資金がなくても創意工夫で新しいビジネスを作ることができることを伝えていきたいですね。

瀬戸内の何が高掛さんを引き付けるのですか?

瀬戸内の多島美を中心とした自然景観です。瀬戸内はまだまだ発掘されていない空間があり、無限の可能性を秘めていると思います。今の時代に合わせて、観光客、地元の方がワクワクするような空間に変えることができたら、それはここにしかない価値を生み出し、新たなビジネスモデルをつくることになると思います。そうして若者が魅力的に感じる雇用を創出し、東京一極集中の流れを和らげることができれば、瀬戸内はもっと面白くなると思います。そんなチャレンジングな空間であることが、一番の魅力ですね。

東京と広島、どんなところが違いますか?

何よりも目に入ってくる色が違います。東京はグレーが多い印象ですが、広島はグリーンやブルー。風に乗ってくる植物や潮の香りを感じられるのも、広島ならではでしょうか。
あとは、趣味の魚釣りが徒歩圏内でできること。東京にいる頃は、魚釣りのために千葉県の勝浦まで2、3時間かけて出掛けていましたが、今は家の目の前に海がありますし、仕事のランチタイムに会社の敷地に面した海で上司と魚釣りをしたり、釣った魚を同僚にふるまったりすることもあります(笑)。様々な方との自然を介したコミュニケーションが増えました。

通勤スタイルも大きく異なります。東京では毎日満員電車で移動していましたが、広島では、好きな音楽を聴きながらのんびり車通勤。しまなみ海道を走りながら「今日は海に差し込む光がきれいだな」と景色を眺めながら通勤しています(笑)。日常の中にちょっとした旅がある感じで、移動時間でさえも新しい発見があって楽しい。こんな感情を味わえるのは瀬戸内エリアだけかもしれません。

これからの目標を教えてください。

今後の活動の中で重要視しているのは、空き家や耕作放棄地の活用です。これらを上手くリノベーションしていき、都市部への一極集中、人口減少に伴う農業の担い手の減少、空き家・耕作放棄地の増加といった社会問題を解決していきたいと考えています。私の活動の根底にあるのは、誰もが真似できる地域活性化のモデルケースを作っていくこと。その土地で暮らす方が自分たちの力で手掛けていけるようになると、地域に雇用が創出されますし、地元の子どもたちにとっても職業の選択肢が広がります。それは、将来的に瀬戸内エリアの経済を潤すことにもつながるはず。自然という最大のコンテンツを活かし、人が訪れて喜び、地元の方が笑顔になり、活力の連鎖になる事例を作っていきたいですね。すべては“ワクワク”する気持ち。自然とつながっている瀬戸内こそ最高のステージです。

移住を検討中の方へメッセージをお願いします

まず考えてほしいのが、移住の目的を明確にすることだと思います。自分の人生において何がしたいのか、どう生きていきたいのか。慣れない土地で心が折れることもあると思います。私は移住初年度、所得が3分の1に減り、苦しい時期もありましたが、そのとき自分を支えたのは、移住前に考えていたビジョンでした。だからこそ信念を持って移住することが大切なんです。
広島には瀬戸内という最大のコンテンツがあり、アイデア次第で新しい価値を無限に作ることができます。そういう意味では他にないビジネスチャンスが眠っていると感じています。加えて、広島はコミュニティ力が強い土地柄。

自分のやりたいことを周りの人に相談したり、話したりしている内に、同じ志を持った仲間が集まってきます。一人ではできないことも仲間がいればできますし、サポートだってしてくれます。開放的な環境で、自由に、のびのび個性を存分に発揮することができるんです。自分の発想をカタチにしたいと思う方にとっては面白い環境と条件がそろった場所ではないでしょうか。

平日

7:00 起床
7:45 会社へ
しまなみ海道の景色を楽しみながら車通勤
8:45 仕事を始める
商品開発が中心の業務
12:00 ランチタイム
上司と一緒に魚釣り
13:00 仕事再開
18:00 仕事終了
帰宅途中に1時間釣りをすることも
19:00  帰宅 夕食
24:00  就寝

休日

10:00 起床 ブランチ
11:00 島の調査活動
仲間の船で出航
16:00 帰港
17:00 解散
仲間とお好み焼きを食べて帰ることもあります
20:00 夕食
24:00 就寝
高掛 智朗さん

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