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INTERVIEW

都市と自然。2拠点ならではの「仕事」と「くらし」を満喫。 オーガニック野菜や食材にこだわり、本物の「食」を提供したい

栗栖 伸明さん

バンクーバー(カナダ) →  広島県
2010年
1978年生まれ ビストロ/シェリーの畑(広島市)、農園/あちゅらむオーガニックファーム経営(庄原市) 家族4人暮らし(妻、息子、娘)

結婚前にふたりで体験したカナダ・バンクーバーでのファームステイ。そこで知ったのは、自然に寄り添い、逞しくシンプルなライフスタイルとオーガニック農法。庄原市にUターンし、居酒屋と農園を立ち上げて結婚。自然の力を受けて育つオーガニック野菜を作り、自身の居酒屋で提供している。二児の父。

庄原市に住むことになった経緯を教えてください

妻は鳥取出身、僕はここ庄原市西城町の出身です。妻と交際中だった2008年、彼女がワーキングホリデーを利用して、1年間カナダに住んでいたんです。最後の2ヵ月間は僕もカナダに渡り、彼女と合流。食事と宿泊場所を提供してもらう代わりに労働力を提供するWWOOF(ウーフ)という制度を利用し、バンクーバーで老夫婦が営むファームステイをふたりで経験しました。そのご夫婦はベジタリアンで、自分たちで食べるものは自分たちの畑で育て、毎日料理してふたりで食べるというシンプルなライフスタイルで、その価値観にふたり揃って強く共感。なにより、ご主人の「人は何でもできる。できないことはない。」という言葉に強く感銘を受け、「何かを

始めないと失敗もしない。やらなければ始まらない。」と思うようになりました。その後、アメリカやカリブを旅して広島に戻りました。
2010年、広島市中区に居酒屋「ごはんばー旬の畑食堂」をオープン。その店で使う野菜は自分たちで作りたかったので、僕の実家と近隣の畑を借りて、化学肥料や農薬を使わないオーガニックな野菜を作り、販売をする「あちゅらむオーガニックファーム」を立ち上げました。そして同時に結婚をしました。
現在は,店舗を広島市中心街に移し,ビストロ「シェリーの畑」として,新しくチャレンジを始めたところです。

農業や店の経営の経験はあったのですか?

僕の家は代々農業をしていましたが、それはあくまでも自給できる程度のものでした。店の経営も経験はありませんでしたが、妻が飲食店関係の広報の仕事をしていたので情報はあり、何とかなるのではと思っていました。
僕は元々、ものを作ることや自然の中に身を置くことが好きでした。結婚する前は広島市内に住んでいて、夏場は仕事をし、冬はスノーボードをして暮らしていました。だから今も自然の中が好きなので毎日畑に出て、太陽を浴びて土を触る現在の生活にはストレスを感じません。

カナダで得たことを教えてください

日本人はどちらかというと暮らしの中心が仕事になりがちですが、僕たちが結婚前に過ごしたカナダでは、仕事はあくまでもプライベートを楽しむためのもの。豊かな自然の中で、健康的な野菜を自分たちで育て、食べる。シンプルでぜいたくなカナダ人のライフスタイルは、その後の生活や価値観に大きな影響を及ぼしたと思います。カナダで過ごした時期、僕はこれまでで一番体調が良かったし、気持ちも安定していましたしね。妻も同様で、と言うより僕より妻の方が、帰国後も自然に寄り添った暮らしをしたいと望んでいたようでした。現在も彼女は、毎日の食事や子ども達のおやつは全て、僕が作った野菜や無添加の食材で手作りしてくれています。大変だろうけどとてもありがたいと思っています。

どんな野菜を作っているのですか?

僕が作る野菜は、その名の通り農薬や化学肥料を使わない無農薬野菜。ほぼ独学で、四季それぞれに約40品種を作っています。西城は寒暖の差が激しい上に、土の栄養だけで育てる農法ですので、その野菜が本来持っているしっかりした濃い味がします。一番分かりやすいのは人参やかぼちゃでしょうか。スーパーで売られているようなキレイな形ではなく、大きさもまちまちなんですが、野菜が本来持つ甘みが濃縮していると思います。

春から秋に掛けては、野菜を詰め合わせて個別に宅配便で送るサービスもしています。広島市内はもとより、関西、関東からの方からもオーダーをいただいていて、「味がしっかりしていますね」「お通じが良くなった気がします」など、自分と同じような感想を聞くことが一番嬉しく、安心しますね。
レストランなど飲食店にも卸しているので、おいしいことはもちろんカラフルで見た目にもきれいな野菜作りを心がけています。ズッキーニや大根などは色や感触の違うものを作ったり、生でも食べられるコリンキー、紫色をしたささげ豆を作ったりするなど、個性的な野菜を作ることも面白いです。

カナダから帰国してなぜ広島を選びましたか?

カナダから帰った時、他の地域の田舎暮らしも考えましたが、僕の父が亡くなり母のサポートをしないといけないこと、西城には代々所有する田畑があることを考えて、地元に帰ることにしました。
帰国後5年間くらいは貯金をし、それから店を出そうかとも思ったのですが、僕も妻も、やろうと思ったときにすぐにやりたいタイプ。帰国して1年後に店を出すことができました。店も農業も、最初から全てがうまく行くとは思っていませんでしたが、根がポジティブなせいもあり、何もしないままリスクばかり心配していても仕方がないと思ったんです。やりたいと思ったときにやらないで悔いるよりも、まずはやってみなければという思いは、当時も今も変わっていません。

現在はどんな日常ですか?

畑は庄原市内から車で20分ほどの庄原市西城町にあります。
毎朝畑に向かい、少なくとも午前中は毎日手入れと収穫。2016年には狩猟免許を取得したので、猪を捕るために仕掛けたいくつかの罠も見て回ります。春は芋や夏野菜の植え付け、夏はキュウリやトマトなど夏野菜の収穫、秋は根菜類の植え付け。一部の野菜は種を自家採取して、苗を育てるところからしています。採れた野菜は「シェリーの畑」や、契約しているいくつかの飲食店に納品するために、多くて週4日は広島市に通います。

「シェリーの畑」は、野菜中心のメニュー構成で、採れたての野菜を召し上がっていただくため、「本日のおすすめ料理」を設定し、旬の味を提供しています。無添加で体に良い食事を摂りたいと思っている人のための居酒屋なので、ワインもオーガニックのものも揃え、グループでも、女性1人でも気軽に入れる雰囲気にしています。店には有能なシェフやホールスタッフもいますが、店が忙しい週末は僕も厨房とホールをサポートしています。営業が終わって帰宅すると日付が変わっていることもあります。忙しくても僕の野菜を広島市内の方に食べてもらえること、おいしさを発信できること、それにお客様から直接感想を聞けることは、とてもありがたく楽しいことです。

店を経営するにあたり、広島市に住んで畑のある庄原に通うほうが効率はいいのかもしれませんが、それは考えていません。やはり自然豊かな田舎に拠点を置き、自然の中で暮らし子ども達を育てたいですしね。時々子ども達を畑に連れて行くと、畑から直接野菜を齧って、楽しみながら自然のありがたさを感じているようです。

今後の展望はありますか?

新たな飲食店を広島市内にオープンさせ、オーガニック野菜を提供する店を増やしたいと思っていましたが,今回,チャレンジする機会,人材に恵まれ,新店舗で経営を始めることができました。
さらに、今後、僕たちがカナダで体験したWWOOFの仕組みを、この西城で展開していきたいと考えています。国内外を問わず、農業に関心のある人を西城に招き、農業を広めたい。そしていろんな国、いろんな地域の人の価値観を知り、庄原市の活性化、国際交流ができればいいなと思います。その人たちが自分の町に帰って農業を普及させ、農業を通してその地域のコミュニケーションを広げていくのが理想的です。そのために僕は実家をゲストハウスにしていくなど、受け入れ態勢を作るための課題がたくさんあります。週数回、広島まで運転する時間を利用して、英語の勉強をしようかとも考えますよ(笑)。また海外から民泊する人が来るようになれば、自分の子ども達にも国際感覚と多様な価値観を養って欲しいと願っています。

移住を考えている人にメッセージを!

広島は都市と田舎がコンパクト。広島市内から高速道路で1時間も走ればこんなに豊かな自然があります。庄原に住みながら広島市内でビジネスをすることも可能なんです。自然に寄り添いながら仕事をすると、都会とは違った豊かな発想や価値観が持てるのではないでしょうか。

平日 (夏)

5:30 起床 朝食
6:00 車で20分の畑へ。収穫や罠の仕掛けを点検
12:00 畑で昼食 妻の手作り弁当
17:00 仕事を終了。帰宅
19:00 夕食後、子ども達と遊ぶ
21:00 子どもを寝かせつつ、自分も寝てしまう

週末・休日

5:30 起床 畑へ
8:00 畑で野菜を収穫、パッケージ詰め
12:00 昼食
13:00 野菜を車に積み、広島市内へ
15:00 広島市内の契約飲食店に野菜を卸す
18:00 「シェリーの畑」へ出勤
店を手伝いながら接客
2:400 帰宅
25:00 就寝
栗栖 伸明さん

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