土地や人の魅力に惹かれて移り住んだ広島。時に立ち止まり、迷いながら、自分が本当にやりたいと思えることに挑戦。
若林 奈那さん
学生時代に広島のゲストハウスで住み込みのアルバイトをしたことをきっかけに、土地が持つ魅力やおおらかな県民性に魅せられ、移住への思いを強めた若林さん。ゲストハウスやホステルで経験を積み、現在は外国人旅行者をメインターゲットにした観光ツアーガイドとして活躍の幅を広げています。異文化交流が楽しめるシェアハウスで暮らしながら、広島や瀬戸内の魅力を発掘し、世界中の人に伝えています。
ゲストハウスを通じて、異文化交流の楽しさを知る
埼玉で生まれ育ち、大学や新卒で入った会社も実家から通いました。
大学を浪人した時に、父の勧めで京都のユースホステルで2ヶ月間住み込みのアルバイトをしたことがあって。受験勉強に煮詰まっているのを見かねた父が、気分転換の意味を込めて勧めてくれたのですが、これがとても印象的な経験になりました。
商社に勤めていた父の影響で、旅や海外への興味は早くから持っていましたね。私の名前も、海外の人に覚えてもらいやすいように「なな」と付けてくれたようです。
大学卒業後は都内の会社に入社したのですが、身体的にも精神的にもハード過ぎて、1年足らずで退職することに。「また旅にでも出れば?」と父が言ってくれたので、広島のゲストハウスに滞在することにしました。
“ゲストハウス”“住み込み”と検索したら、「バックパッカーズ宮島」という宿がヒット。フリーアコモデーションといって、業務を手伝いながら無料で寝泊まりできる仕組みを利用して、3ヶ月ほど滞在しました。
広島で感じた“人の豊かさ”が忘れられず移住を決意
広島から実家に戻った後は、東京・上野のゲストハウスに就職。外国人旅行者に接しながら、ワーキングホリデーなども視野に入れつつ将来を考えていました。
仕事はとてもやりがいがあったのですが、自分の中で広島の存在がどんどん大きくなってしまい…。
「バックパッカーズ宮島」で一緒に働いていたスタッフを含め、広島で出会った人が本当に良い人ばかりだったんです。みんなアットホームで、よそからやってきた私にも親切で、“人の豊かさ”というのをすごく感じました。
「広島で暮らした方が私は幸せになれるんじゃないか」「もう一度広島へ戻りたい」と考えるようになり、移住を決意しました。
ワーキングホリデーへの憧れもあったのですが、それよりも「広島へ帰りたい!」という気持ちが強かったですね。
移住相談窓口を活用し、移住に向けて着々と準備
広島への移住を視野に入れ、ゲストハウスを退職してシェアオフィスやコワーキングスペースを運営する会社に転職。当時の上司が教えてくれたのが、「ひろしま暮らしサポートセンター」でした。なんと勤務先と同じビルの上階にあったんです(笑)。
相談員の森上さんや吉岡さんに話を聞いてもらい、移住までのステップを計画したり、広島での就職について相談しました。結局、仕事は転職サイトで見つけたのですが、面接の際に片道交通費支援制度を活用させてもらえたのはありがたかったです。
何より、相談員のみなさんが気さくに接してくださるのがいい! 形式的なやり取りではなく、あくまで私の想いに寄り添ってくれて。森上さんも吉岡さんもおおらかな人柄で、すごく立ち寄りやすかったし、都会の中の落ち着ける場所でした。
また、東京に移ってからも「バックパッカーズ宮島」のスタッフさんとは繋がっていたので、「広島に戻ってくる時は教えて」「助けるよ!」と言ってくれる人たちがいて、心強かったです。
得意分野を活かした就職でまずは足元を固める
広島では、観光とか外国人旅行者に関わることをやりたいと思っていましたが、ユースホステルのフロント業務委託会社に就職し、まずは得意分野を活かして足元を固めることに注力しました。
移住って簡単なことではないし、繋がりも何もない場所にIターン移住するなんてリスキーですよね。移住を考えている人は、移住先でやりたいことが色々あると思いますが、まずは自分が今までやってきた仕事の延長線上でできることをしてみるのも一つの選択肢としてありかなと。慣れない場所で、まずは地固めをしていくことも大切だと思います。
人とのつながりで出会った観光ツアーガイドの仕事
移住してから半年後くらいに、コロナの波が押し寄せて…。勤務先は外国人旅行者の利用が主だったので、予約がすべてキャンセルになりました。本当につらかったのですが、その期間にいろいろとリサーチしたことが、今の仕事へとつながるきっかけに。
「地方で暮らすというのは、人とのつながりがすべてだ」という父の助言もあり、Facebookを活用して、自分にもっと合う仕事がないか、リサーチしていました。
そこで出会ったのが、一般社団法人My Japanが運営する『Asageshiki』。観光ツアーの運営やガイドのマネジメントをする会社です。
知人が「広島に新しいツアーができる」と発信しているのを見て、すぐに応募。代表の三村さんは熊野町の出身なので、私が熊野町に住んでいたことをとても喜んでくださって、観光ガイドとしての活動をスタートしました。
神社を目指してトレッキングをしたり、絶景を眺めながら朝ご飯や野点楽しむという朝時間を活用したツアーがメイン。外国人旅行者も多く、本当にやりたかったことにようやく近づいた気がしています。
観光ツアーガイドとしてやりがいと幸せを感じる日々
予約があるときは、朝7時半頃から3〜4時間かけてツアーガイドをします。それ以外の時間は、所属しているガイドのシフトを管理したり、ツアーのマネジメントをしたり、個人や海外の旅行社と予約のやり取りをしたり。リモートで事務作業をこなします。ゲストハウスやホステルで働いた経験がすごく活きているなと感じています。
今の仕事は自由度が高い分、プレッシャーを感じることもありますが、やっと広島に来た意味を見出せた気がしています。自分の経験を活かしながら、広島のローカルな魅力を外国人に伝えることで、「なんて幸せな仕事をさせてもらえているんだ!」と嬉しくなりました。
広島&瀬戸内のローカルな魅力を世界に届けたい!
広島で暮らしながら、ツアーガイドの仕事をしてみて思うのは、広島も瀬戸内も魅力だらけだということ。瀬戸内が世界で一番平和な場所なんじゃないかと思うほどです。
天気が良くて、洗濯物がよく乾くし、気持ちがいい! 気候が人柄にも影響するのか、出会う人みんなが良い人過ぎて、逆に不安になるくらいです(笑)。
海も山もあり、食べ物もおいしくて、ものづくりも盛んで、カープもある(笑)。資源にあふれた豊かな土地だからか、地元愛が強い人、前向きでプラス思考な人が多い気もします。移住する前も、移住した後もすごく水が合うなと感じています。
広島に移住して、車を持ったので、今の趣味は長距離ドライブです。福山や尾道のコワーキングスペースに行って、リフレッシュしながら仕事をしたり。祖父が藍染の職人だったので、福山で藍染体験もしました。
広島にはたくさんのコンテンツがあるので、魅力を探してツアーにつなげていきたいです。仕事とプライベートが一体化した感覚を楽しんでいるし、それが広島に来た醍醐味でもありますね。
そして、広島だけでなく瀬戸内全体を盛り上げたいと思っています。四国とか周辺地域を含めて、ローカルな魅力を発掘し、新たなつながりを生めるプレイヤーになりたい。自分のキャラクターを活かしながら、瀬戸内ブランドを世界に向けてもっと広げていきたいです。瀬戸内の魅力、そして日本の魅力を世界の人に伝えるのが、当面の目標です!
スケジュール①(ツアー対応時)
6:00 | 起床・身支度・朝食 |
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7:30 | 観光ツアーの仕事開始 |
11:00 | ツアーの仕事終了 |
12:00 | 自宅へ戻って昼食・休憩 |
15:00 | パソコンで事務作業の仕事 |
19:00 | 休憩・夕食 |
21:00 | 事務作業の仕事終了 |
23:00 | 就寝 |
スケジュール②(ツアーがない日)
8:00 | 起床・朝食 |
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10:00 | 部屋の掃除やパソコン作業 |
12:00 | 昼食 |
13:00 | 尾道や宮島のコワーキングスペースでパソコン作業 |
15:00 | 観光しながら休憩 |
17:00 | 作業終了・ドライブしながら家へ戻る |
19:00 | 自宅へ帰宅・夕食 |
20:00 | 自由時間(シェアハウスのルームメイトとおしゃべりしたりしてます) |
23:00 | 就寝 |